過去の傷が捨てられない理由
ゴミ屋敷の問題を抱える人の中には、過去のトラウマや深い喪失体験が、物を手放せない心理の根底にある場合があります。辛い出来事や大切な人、あるいは大切な物を失った経験は、心に大きな傷を残し、その後の考え方や行動に影響を与えることがあります。物を溜め込む行為が、無意識のうちに、その心の傷を癒やそうとする、あるいは過去の喪失感を埋め合わせようとする代償行為となっている可能性があるのです。例えば、幼少期に貧しい経験をした人は、物がないことへの不安が強く、将来への備えとして過剰に物を溜め込んでしまうことがあります。「いつか必要になるかもしれない」という思いが人一倍強く、物を捨てることが極度の不安を引き起こすのです。また、大切な人を亡くした経験を持つ人は、故人の遺品を一切手放せないことがあります。それらの物は、故人との繋がりを感じさせてくれる唯一のよすがであり、それを失うことは、再び喪失感を味わうことにつながるため、強い抵抗を感じるのです。さらに、虐待やネグレクトなどのトラウマ体験を持つ人は、自己肯定感が著しく低下していることが多く、自分自身を大切に扱えない傾向があります。その結果、自分の生活空間を整えることにも無関心になり、セルフネグレクトの状態に陥り、ゴミ屋敷化を招くことがあります。物が散乱し、不衛生な環境は、自分自身を罰しているかのような、あるいは自分の価値の低さを反映しているかのような状態とも捉えられます。このように、過去の傷が癒えないままになっていると、それが物を溜め込む行動やセルフネグレクトに繋がり、ゴミ屋敷という問題を引き起こすことがあります。表面的な片付けだけでなく、心のケアが必要となるケースも少なくありません。