あれは忘れもしない、数年前の冬の朝でした。前日の夜から「今シーズン一番の冷え込み」だと天気予報は盛んに告げていましたが、私は「まあ大丈夫だろう」と高を括っていました。河南町では配管をトイレつまりにして漏水すると、我が家の給湯器はまだ設置して数年の新しいモデル。自動の凍結予防機能もついているはずだと、何の疑いもなく暖かい布団にもぐりこんだのです。そして翌朝、顔を洗おうと洗面所の蛇口をお湯側に捻った瞬間、異変に気づきました。いつまで経っても、冷たい水しか出てこないのです。耳を澄ますと、家の外から微かに「ポタ、ポタ…」という不審な音が聞こえてきます。蛇口の水漏れ専門チームは忠岡町でも対応可能にした胸騒ぎを覚え、慌ててパジャマのまま外に飛び出しました。 目に飛び込んできたのは、給湯器本体の下部から、まるで涙のように水滴がしたたり落ちている光景でした。頭が真っ白になり、血の気が引いていくのが分かりました。「凍結」という二文字が頭をよぎりましたが、それはもはや手遅れであることの宣告に他なりませんでした。すぐにインターネットで水道業者を探し、何件も電話をかけましたが、同じような凍結トラブルが多発しているらしく、どこも「すぐには伺えません」という絶望的な返事ばかり。結局、業者の人が我が家に来てくれたのは、それから三日後のことでした。その三日間、真冬にもかかわらずお湯が一切使えない生活がどれほど過酷だったか、言葉では言い尽くせません。冷たい水での食器洗いや、銭湯への往復。当たり前の日常が、いかにこの給湯器という機械一つに支えられていたかを痛感しました。 そして、ようやく訪れた診断の時。ベテランの作業員の方は、給湯器のカバーを開けて中を覗き込むと、すぐに静かに首を横に振りました。「ああ、これは完全にやられちゃってますね。内部の熱交換器が凍結で破裂しています。修理は不可能なので、本体ごと交換になります」。そして提示された見積書に記載されていたのは、私の想像をはるかに超える「数十万円」という金額でした。私は思わず天を仰ぎました。前日の夜、わずか数分で終わるはずだった水抜きという作業を怠った代償が、これほどまでに大きいとは。作業員の方は、そんな私を気の毒に思ったのか、こう付け加えました。「新しい給湯器でも、電源を抜いていたり、想定外の寒波が来たりすると凍結は防げません。一番確実なのは、やはりご自身で水抜きをしていただくことなんですよ」。 この手痛い経験は、私に二つの重要な教訓を教えてくれました。一つは、機械の「自動機能」を過信してはいけないということ。そしてもう一つは、予防のための「一手間」は、面倒な作業ではなく、未来の自分と家計を守るための最も賢明な投資であるということです。以来、私は天気予報で少しでも厳しい冷え込みが予想される夜や、冬場に家を空ける前には、必ず給湯器の水抜きを行うようになりました。あの数十万円の出費は授業料だと思うしかありませんが、この記事を読んでくださったあなたが、私と同じ過ちを繰り返さないことを心から願っています。どうか、お使いの給湯器の取扱説明書に一度目を通し、水抜きの方法を確認してみてください。そのわずかな行動が、冬の悪夢からあなたを救うことになるのですから。
給湯器の水抜きを怠った私を襲った冬の悪夢